水たまりの中の青空
SS1 胸騒ぎ(つづき) まるで夜のような暗さだった。奈津は梶の影に怯えながら、ひとり洞窟の中でうずくまっていた。 そのとき、何かドサッと落ちる音がした。 「あ、奈津さん!」 幸介は安心すると、外に出て誰かと交信を始めた。奈津には相手の声までは聞こえなかったが、ほかにも探しに来てくれた人がいたことに、感謝と申し訳ない気持ちになった。 そのとき、時を見計らったように大粒の雨が降り出した。 奈津と幸介は、突然の雨で完全に孤立した。 「ありがとう……」 夜になり、ふたりは肌と肌を触れ合わせ、いつやむか分からない雨音を聞いていた。 奈津は今の状況に戸惑っていた。自分から体を寄せたのは、純粋に寒さをしのぐためなのか、それとも、彼を試そうとしているのか……。 他愛無い会話をしながら、奈津の心は次第に癒されていった。そして安らかな気持ちで外を眺めていると、突然雷鳴とともに空が明るくなった。 ―――見られている。 奈津は幸介の視線を感じ、背筋が凍った。 彼の指先が髪を撫ではじめる――― 奈津の心は押しつぶされそうになった。彼だけは巻き込みたくなかった。思わず息苦しくなり、吐くような息が漏れた。 「ごめんなさい……」 彼に詫びるような目を向けながら、奈津は言い知れぬ胸騒ぎを覚えていた。 |